失敗事例と成功事例から学ぶ、電子帳簿保存法対応プロジェクトの重要ポイント~要件対応における重要な論点編~
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様々な要件が設けられている電子帳簿保存法スキャナ保存への対応においては、検討すべき事項が多岐にわたります。その中でも、スキャナ保存要件に対応した運用フローを設計する上で特に重要な論点についてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.入力方式の選定
- 2.電子帳簿保存法における定期検査とは
- 3.定期検査の運用方法
- 4.まとめ
電子帳簿保存法の対応状況や、対応後の経理業務にかかる時間の変化など、アンケート調査結果をご紹介します。
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入力方式の選定
電子帳簿保存法スキャナ保存において、領収書等の国税関係書類の紙原本をスキャンし、画像化するまでの一連の行為を「入力」と言い、「入力」には主に二つ方式があります。
(以降、「立替経費精算業務における領収書」をスキャナ保存対応することを想定し、解説いたします。)
♦ 特に速やか方式…領収書受領後、翌日から起算しておおむね3営業日以内に入力
♦ 業務処理サイクル方式…領収書受領後、翌日から起算して業務処理サイクル期間(最長2ヵ月) +おおむね7営業日以内に入力
特に速やか方式は、入力が認められる期間が短いため、相互けん制の要件として求められている、「領収書受領者以外による紙と画像の同等性チェック」が不要であり、一方で業務処理サイクル方式は、「領収書受領者以外による紙と画像の同等性チェック」が必要であるが、入力が認められる期間が長い、など方式ごとにメリット/デメリットがあり、どの方式を採用するべきかお悩みになる企業が多くあります。
そのため、あえてどちらかの方式に絞らず、二つの方式を併用する形で申請されることがあるのですが、プロジェクトが失敗しやすい企業の多くは、その際に詳細な運用まで固めておらず、イレギュラーなケースもあまり想定せずに運用を開始してしまい、その結果、現場の混乱や各方面からの問合せ発生、従業員への再教育など、様々な問題が発生し、経理部や総務部等の負担が増えてしまうことがよくあります。
また、正しく電子化運用ができていなかった場合、税務調査時に指摘され、場合によっては電子帳簿保存法の承認の取り消しや青色申告の取り消し等へと問題が発展する可能性があります。
そのため、入力方式は一つの方式で絞って運用するか、二つの方式を組み合わせる場合は様々なケースを想定した上で、詳細に運用を設計しておくことが、プロジェクトを成功へと導く上で重要となります。
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電子帳簿保存法における定期検査とは
定期検査とは、紙原本を廃棄する前に電子化が正しく実施されているかを確認するための、定期的な検査です。
電子帳簿保存法の定期検査は、年1回以上することと、当該事務処理をしていない第三者がおこなう点にポイントがあります。
定期検査の頻度が多くなると大変だという印象がありますが、紙の書類を少しでも減らしたい場合は、定期検査の頻度を多くするをオススメです。
定期検査の後でなければ、該当書類である紙の領収書などを破棄できないからです。
定期検査を事務処理を担当しない第三者がするのは、不正な会計処理を防ぐのが目的です。第三者がチェックをおこなえば、紙の領収書の改ざんにも気づきやすくなります。
定期検査は、税務や会計の知識がなくてもできますので、知らないで選んだ任意の従業員に担当してもらうことも可能です。
定期検査の運用方法
入力方式と並んで、運用設計においてよく論点となるのが定期検査の運用方法です。
定期検査において、「検査の実施頻度」や「実施の記録を残す」等の要件は法令上規定されていますが、検査の具体的な実施方法については要件上特に明記はされておらず、申請企業の社内ルール等に合わせて各社ごとに設計する必要があります。
具体的な運用方法が定められていない定期検査ですが、多くの企業で採用されている方法の一つに、サンプル検査があります。
検査対象の全領収書の中から無作為にサンプルを一定数抽出し、抽出した対象の証憑について、紙原本と画像を突合チェックする方法です。
サンプルの抽出方法のパターンは、主に下記の2つです。
♦ システムから抽出する方法
♦ 紙から抽出する方法
システムから抽出する方法は、本社の経理部等の管理部門が各拠点の検査対象を抽出し、検査の実施をコントロールできるため、網羅性の担保や内部統制の観点においてメリットがあります。
一方、検査対象を探し出しやすくするために紙原本をある程度整理して保管しておく必要があります。
他方、紙から抽出する方法は、抽出した紙原本の情報をもとに画像データを検索し、突合するにあたってあまり手間がかからず、紙原本の保管方法も特に丁寧に整理する必要もなく、運用上の負担が少ないというメリットがあります。
しかし、紙原本が提出されていない領収書については抽出対象外となってしまうため、網羅性を担保できない可能性があるというデメリットがあります。
このように、パターンごとにメリット/デメリットが異なるため、定期検査の運用検討においては、自社の求めるガバナンスレベルを担保しながら、費用対効果を意識した運用を設計していくことがプロジェクトの成功/失敗の分かれ目となります。
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まとめ
今回は、領収書を例に電子帳簿保存法スキャナ保存への要件対応について運用上重要な論点をご紹介いたしました。
自社に最適な電子帳簿保存法対応運用フローを設計するためには、ただ要件対応するだけでなく、効率性や現場の負担も併せて検討する必要があります。
次回は、電子帳簿保存法スキャナ保存への対応プロジェクトを進める上で障壁となり得るポイントや効率的な進め方をご紹介していく予定です。