catch-img

企業の信頼獲得に繋げる出張のCO2排出量開示 ~算定から削減の考え方~

企業におけるサステナビリティ対応は、いまや一部の先進企業に限られたテーマではなく、投資家や取引先、社会から企業姿勢を評価されるうえで前提となりつつあります。こうした機運を背景に、企業のサステナビリティへの取り組みは、法規制への対応にとどまらず、企業価値を高めるための重要な施策となっています。

また、昨今ではサステナビリティ情報開示に関する制度整備も進み、企業にはCO2排出量を把握し、説明できる体制づくりが求められつつあります。

本記事では、Scope3カテゴリー6に該当する「出張」に焦点を当て、CO2排出量の算定方法と、可視化したデータを削減施策につなげる考え方を解説します。

目次[非表示]

  1. 1.Scope1・2・3とは?まず押さえたいCO2排出量の基本
  2. 2.Scope3カテゴリー6(出張)とは
  3. 3.CO2排出量の開示は段階的に拡大へ
  4. 4.出張におけるCO2排出量の算定方法
    1. 4.1.従業員数ベース
    2. 4.2.旅費ベース
    3. 4.3.距離ベース
  5. 5.必要な出張を維持しながら、排出を最小化する時代へ
  6. 6.SAF活用によるCO2削減
  7. 7.まとめ

Scope1・2・3とは?まず押さえたいCO2排出量の基本

企業活動に伴うCO2排出量を把握する際、まず理解しておきたいのが「Scope1・2・3」という考え方です。これは、企業の排出量を自社の直接排出だけでなく、購入したエネルギーやサプライチェーン全体に広げて整理する枠組みです。

Scope1は、自社が保有・管理する設備や車両などから直接発生する排出量を指します。Scope2は、購入した電力や熱、蒸気などの使用に伴う間接排出です。これに対してScope3は、Scope1・2以外の間接排出を指し、原材料の調達、物流、製品の使用・廃棄、従業員の通勤や出張など、企業活動に関連する幅広い排出が含まれます。

Scope1・2・3の区分

Scope3カテゴリー6(出張)とは

Scope3は15のカテゴリーで構成されており、「出張」はその中のカテゴリー6に該当します。

カテゴリー6は、従業員が業務目的で移動する際に発生するCO2排出量を対象としており、主に、航空機、鉄道、バス、タクシー、レンタカーなど、自社が保有・運行していない交通手段による出張が含まれます。宿泊に伴う排出量を含める場合もありますが、対象範囲は算定方針に応じて整理する必要があります。

なお、業務上の移動であっても、すべてがカテゴリー6に含まれるわけではなく、例えば、社有車など自社が所有・管理する車両の排出はScope1、従業員の通勤はScope3カテゴリー7として整理されます。

また、Scope3カテゴリー6(出張)は企業の排出量全体の中で必ずしも最も大きな割合を占めるとは限りませんが、航空機や鉄道、宿泊などの利用実績をもとにデータを取得しやすく、企業の移動に関する方針や出張管理の高度化とも結びつけやすい領域です。

CO2排出量の開示は段階的に拡大へ

日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)によりサステナビリティ開示基準が公表され、Scope3を含めた気候関連情報の開示義務化に向けた制度整備が進んでいます。本記事執筆時点では、2027年3月期から東京証券取引所プライム市場に上場する時価総額3兆円以上の企業約70社を対象に開示が義務化され、2028年3月期に同1兆円以上の160~170社に対象が拡大される見通しです。

今のところ開示義務化の対象は上記の通り一部に限られているものの、今後の対象拡大の可能性や、CO2排出量の開示・削減への取り組みが長期的な企業価値と競争優位を生む投資につながることを考慮すると、Scope3の各カテゴリーについて「自社の事業活動の中で、どこの排出量が大きいのか」や「自社が優先して把握すべき排出源はどこか」、「どのデータをどの精度で集めるか」を整理しておくことが重要といえるのではないでしょうか。

次章では、CO2排出量把握の例としてScope3カテゴリー6(出張)における算定方法をいくつかご紹介します。

出張におけるCO2排出量の算定方法

出張におけるCO2排出量の算定方法には、主に従業員数ベース、旅費ベース、距離ベースがあります。どの方法を選ぶかによって算定結果や必要なデータの粒度が変わるため、目的や社内で取得できるデータに応じて使い分けることが重要です。

従業員数ベース

従業員数ベースは、従業員数に一定の排出係数を掛け合わせて概算する方法です。データ収集の負荷が比較的小さく、初期的な把握には有効ですが、実際の出張頻度や移動距離、交通手段の違いを反映しにくい点に注意が必要です。

旅費ベース

旅費ベースは、航空券代や宿泊費、交通費などの支出額に一定の排出係数を掛け合わせる方法です。経費データを活用できるため導入しやすい一方、運賃は時期や予約条件、座席クラスによって変動するため、実際のCO2排出量と乖離が出る場合があります。特にビジネスクラスなどの上位クラスの利用を認めている企業では、CO2排出量が多く見えてしまうことがあるため注意が必要です。

距離ベース

距離ベースは、出発地・到着地、交通手段、搭乗クラスなどの移動実績をもとに、移動距離と排出係数から算定する方法です。従業員数ベースや旅費ベースよりも実態に近い算定が可能で、削減施策の検討にもつなげやすい点が特徴です。たとえば、航空機から鉄道への変更、オンライン会議への切り替え、出張頻度の最適化など、具体的な改善策を検討する際には、距離や交通手段に基づくデータが役立ちます。

JTBビジネストラベルソリューションズでは、出張管理の高度化とサステナビリティ対応を両立する「ESG-BTM」を通じて、距離ベースによるCO2排出量の算出から削減施策の提案、最終的に削減しきれなかったCO2の償却までを支援しています。

▼「ESG-BTM」の詳細はこちら

必要な出張を維持しながら、排出を最小化する時代へ

CO2排出量の可視化は、あくまでスタート地点です。開示に必要な数値を算定するだけでなく、その結果をどのように削減施策へつなげるかが、今後ますます問われるようになります。

出張は、企業活動に必要なコミュニケーションや商談、現地対応を支える重要な手段です。そのため、単純に出張を減らすだけでは、事業機会や従業員の働き方に影響を与える可能性があります。求められるのは、出張の必要性を見極めながら、移動手段や頻度を最適化し、削減可能な排出量を着実に減らしていくことです。

次章では具体的なCO2削減策のひとつ「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料) 」についてご紹介します。

SAF活用によるCO2削減

航空機による出張はCO2排出量が大きくなりやすく、削減に向けた対応が求められる領域です。一方で、海外拠点との往来や重要な商談、現地での確認が必要な業務など、航空機利用を完全になくすことが難しいケースも少なくありません。こうした中で注目されている選択肢の一つが、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の活用です。

SAFは、廃食油やバイオマスなどを原料として製造される航空燃料で、従来の化石由来燃料と比べてライフサイクル全体のCO2排出量削減が期待されています。出張を一律に抑制するのではなく、必要な移動を維持しながら環境負荷の低減に取り組む手段として、企業の脱炭素化における重要な選択肢となっています。

JTBビジネストラベルソリューションズでは、丸紅株式会社と連携し、SAFを活用した環境価値の販売スキームをご提供しています。このスキームでは、航空会社や搭乗便にかかわらず、出張で発生する航空機利用のCO2排出量に対して、SAF由来の環境価値を活用することが可能です。特定の路線に限定されずに取り組めるため、企業の出張実態に合わせて柔軟に活用しやすい点が特長です。

また、出張予約とあわせてCO2排出量の可視化から環境価値購入の手続きまでを一括して対応できるため、サステナビリティ部門だけでなく、総務・経理・出張管理部門の実務負荷を抑えながら取り組みを進めることができます。排出削減証明書を活用することで、社内外への説明材料としても活用しやすくなります。

SAFプロブラム:航空機出張の償却スキーム

まとめ

CO2排出量の把握・開示は、制度対応だけでなく、企業が持続的に選ばれるための信頼づくりにもつながります。出張領域では、まず対象範囲と算定方法を整理し、出張データを活用して排出量を可視化することが第一歩です。そのうえで、移動手段や出張頻度の最適化、SAF由来の環境価値の活用など、可視化したデータを削減施策へつなげることが重要です。

関連コラム:ESG-BTMとは?出張管理でCO2削減を実現する方法

▼関連お役立ち資料

編集部
編集部
出張管理・経費精算の「ビズバンスJTB出張予約」「ビズバンスJTB経費精算」「ビズバンスJTB経費データ連携」のトータルソリューションを提供。業務課題を目的とした豊富なツールとプロのコンサルティングで効果分析や運用改善をサポートしています。25年という実績を活かし、経理や人事のバックオフィス業務をはじめとするビジネスに役立つ情報を更新しています。

人気コンテンツ

▼【漫画で読む】
今こそ目指せ!
出張手配と経費精算のDX化

今こそ目指せ!出張手配と経費精算のDX化

人気記事ランキング

カテゴリ

タグ一覧

お問い合わせ

出張手配・経費管理に関するご相談やご質問など、お気軽にお問い合わせください。

法人専用窓口 平日:9:30~17:30