
海外出張時の安全配慮義務とは?主なリスクと企業が取るべき対応策
海外出張では、感染症や治安・犯罪、交通事故、自然災害、メンタル面の健康リスクなど、想像以上に多くの危険が潜んでいます。こうしたリスクを放置すると、従業員の安全だけでなく、企業の信頼や業務の継続にも影響を及ぼす可能性があります。
では、具体的にどのようなリスクがあり、企業はどのように対応すべきなのでしょうか。
本記事では、海外出張における安全配慮義務の重要性や潜在リスク、企業に求められる対応のポイント、企業が直面する課題などをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.安全配慮義務とは
- 1.1.安全配慮義務を怠った場合のリスク
- 2.海外出張に潜む主なリスク
- 2.1.感染症
- 2.2.治安・犯罪
- 2.3.交通事故や移動中のトラブル
- 2.4.自然災害
- 2.5.メンタル面・過労による健康被害
- 3.企業に求められる対応のポイント
- 4.企業が直面する課題
- 5.海外出張における危機管理は株式会社JTBビジネストラベルソリューションズにお任せ
- 6.まとめ
安全配慮義務とは
安全配慮義務とは、労働契約法第5条に基づき、企業が従業員の安全と健康を確保する義務を指します。これは、業務上の事故や疾病の予防、職場環境の安全確保などを含みます。
国内での通常勤務に限らず、国内・海外を問わない出張時にも適用され、企業は出張先での安全対策やリスク管理を行う責任があります。
安全配慮義務を怠った場合のリスク
安全配慮義務を怠った場合、企業にはさまざまなリスクが生じます。まず法的責任として、労働契約法や労働安全衛生法に基づき、従業員の安全や健康を守らなかった場合には、損害賠償や行政処分の対象となる可能性があります。
また、労働災害や事故が公になることで、企業の社会的信用やイメージが損なわれ、取引先や顧客からの信頼を失うリスクもあります。
さらに、従業員にとって安全配慮が不十分な環境は不安感や不信感を生み、モチベーションの低下や離職の増加といった人材面での影響も避けられません。
このように、安全配慮義務を怠ることは法的・社会的・組織的に多方面での損失につながるため、企業は常に従業員の安全と健康の確保に努める必要があります。
海外出張に潜む主なリスク
海外出張では、国内勤務とは異なる環境や状況により、従業員の安全や健康にさまざまなリスクが潜んでいます。企業は出張先で想定される危険を把握し、事前に適切な対策を講じることが求められます。
感染症
海外出張では、現地の環境や衛生状況により感染症リスクが高まります。新型コロナウイルスやデング熱、食中毒など、地域によって流行する病気は異なり、事前の情報収集や予防接種を行うといった対策が重要です。
感染症が発生すると体調不良による業務の遅れや長期の療養が必要になる場合もあり、企業としても従業員の健康管理や緊急対応体制を整えておくことが求められます。
治安・犯罪
海外出張では、現地の治安状況や犯罪リスクにも十分な注意が必要です。地域によっては、テロや誘拐といった重大事件が発生する可能性があります。また、観光地や空港など人が多く集まる場所では、スリや置き引きの被害も発生しています。
特に夜間の外出や人気のない場所の移動は危険度が高まるため、最新の渡航情報を確認し、現地の治安に応じた行動と企業による危機管理体制が欠かせません。
交通事故や移動中のトラブル
海外出張では、交通インフラや交通ルールが日本と異なる場合があり、交通事故や移動中のトラブルが起こりやすいリスクがあります。道路整備が不十分な地域や交通マナーが乱れている都市では、車両事故や歩行中の接触事故が発生する可能性が高まります。また、公共交通機関の遅延やストライキ、運転手とのトラブルなどによって予定が大きく乱れるケースもあります。
企業は移動手段の選定や安全な交通ルートの確保を徹底し、従業員も常に慎重な行動を心がけることが重要です。
自然災害
海外出張では、現地特有の自然災害に巻き込まれるリスクも考慮する必要があります。地震や洪水、台風、ハリケーンなどの大規模災害は、インフラの停止や交通網の混乱を引き起こし、出張計画の大幅な変更を余儀なくされることがあります。また、停電や断水、食料不足など生活面への影響も大きく、安全確保が困難になる可能性も考えられます。
企業は事前に渡航先の災害リスクを把握し、緊急時の避難ルートや連絡体制を整備することが不可欠です。
メンタル面・過労による健康被害
海外出張では、慣れない環境や文化の違い、時差や長時間移動などが重なり、メンタル面への負担や過労による健康被害が生じやすくなります。業務のプレッシャーや言語の壁、生活習慣の違いから強いストレスを感じ、不眠や体調不良を引き起こすケースも少なくありません。
さらに過密なスケジュールや長時間労働は心身の疲労を蓄積させ、パフォーマンス低下や重大な健康障害につながる恐れがあります。企業は従業員の休養確保や相談体制の整備を行い、過労防止とメンタルケアに努めることも重要です。
企業に求められる対応のポイント
海外出張においては、従業員の安全と健康を守るため、出発前・出張中・帰国後にわたる一貫した対応を行うことが求められます。適切な準備とサポート体制を整え、緊急事態発生時の具体的対応フローも明確にしておく必要があります。そうすることで、リスクの軽減と安心して業務に専念できる環境の確保が可能になります。
出発前
出発前には、企業は従業員に対して渡航先の治安や感染症、自然災害などのリスク情報を提供することが重要です。また、必要なワクチン接種や海外旅行保険への加入を促し、万一の事態に備えた安全対策を徹底します。
さらに、緊急時の連絡体制や対応フローを周知し、従業員が迅速に連絡・行動できるようにすることで、出張中のリスク軽減と安心感の確保につながります。
出張中
出張中は、企業が従業員の安否をリアルタイムで確認できる体制を整えることが重要です。交通事故や病気、治安上のトラブルなどが発生した際には、速やかにサポートや指示を提供できる体制を確保しておくことで、従業員の安全確保と業務継続を支援できます。
帰国後
帰国後は、従業員の健康状態やメンタル面のケアを行うことが重要です。体調不良やストレスの兆候を見逃さず、必要に応じて医療機関や相談窓口につなげられる体制を整えておく必要があります。
さらに、出張全体を振り返り、健康面以外のリスクやトラブルの事例も確認しておくことが大切です。こうした振り返りを今後の出張安全対策に反映させることで、企業全体のリスク管理力を高め、次回以降の安全確保につなげられます。
企業が直面する課題
企業が海外出張における安全管理を実施する際には、いくつかの課題があります。
各国の治安状況や感染症の流行は日々変化しており、最新情報を従業員に提供するのは簡単ではありません。出張先ごとに危機管理対応や現地特有のリスクに合わせた社内ルールを整備することも、人的・時間的な負担が大きくなります。
さらに、航空券や宿泊、海外旅行保険、緊急時対応などの利用先がバラバラだと、情報が分散して管理が煩雑になり、迅速なサポートの提供が難しくなります。旅行手配やサポート窓口を一元化すれば負担は軽減されますが、24時間365日、すべての緊急事態に対応できる体制を自社だけで維持するのは難しいのが現実です。
これらの課題により、従業員の安全確保と出張業務の円滑な運営を同時に実現するための体制づくりに頭を悩ませる企業は少なくありません。
海外出張における危機管理は株式会社JTBビジネストラベルソリューションズにお任せ
株式会社JTBビジネストラベルソリューションズでは、出発前の渡航先リスク情報の提供、出張中の安否確認や緊急サポートなどに対応した『危機管理ソリューション』を取り扱っております。これにより、企業は海外出張時のさまざまなリスクに迅速かつ一貫して対応でき、従業員の安全を確保するだけでなく、安全配慮義務を実効性のあるものとして果たすことが可能です。
企業の安全管理体制を強化し、安心して海外業務に専念できる環境を整えることで、従業員のパフォーマンス向上や出張業務の効率化、企業の信頼性向上にもつながります。海外出張の安全対策を本格的に強化したい企業さまは、ぜひご利用ください。
まとめ
この記事では、海外出張における安全配慮義務やリスク、企業が取るべき対応について以下の内容を解説しました。
- 安全配慮義務とは、労働契約法第5条に基づき、企業が従業員の安全と健康を確保する義務であり、国内外の出張時にも適用される
- 海外出張には、感染症、治安・犯罪、交通事故、自然災害、メンタル面・過労による健康被害など多様なリスクが存在する
- 企業は出発前、出張中、帰国後にわたり、一貫した安全管理体制を整えることで、リスクを軽減し従業員の安心を確保できる
- 海外出張における安全管理には渡航先リスク情報の収集、出張中の安否確認や緊急サポート体制など、多くの課題がある
海外出張における安全管理は、企業にとって重要な責任です。適切な体制を整えることで、従業員の健康やパフォーマンスを守るとともに、企業の信頼性向上にもつながります。
今回ご紹介した内容を踏まえ、海外出張の安全対策を強化したい企業さまは、株式会社JTBビジネストラベルソリューションズの『危機管理ソリューション』の活用を検討してみてください。