奥深い世界-旅客機が 安心・安全・快適な乗り物になるまでの軌跡
私たちが当たり前のように乗っている飛行機は、もともと軍用機として開発され、その後輸送機や上流の人たちに向けた旅客機として変貌を遂げました。今や機能面やサービス面において、安心・快適な空の旅を提供してくれる旅客機ですが、現在のようになるまでにはさまざまな過程があり、多くの失敗も重ねられてきたようです。
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世界初の旅客機はどんなもの?旅客機の歴史
世界で初めてのジェット旅客機はイギリス製「デ・ハビランドDH.106コメット」。エンジンの振動を抑え、空気の乱れが少ない高空を飛ぶことで、快適性を高くした旅客機です。しかし、設計の不備から連続で墜落事故を起こす結果になり、それによる信頼回復が難しく、そのまま生産終了となりました。
一方で、「ダグラスDC-8」や「ボーイング707」などといった、より高性能でスピーディ、多くの乗客を乗せられるアメリカ製ジェット旅客機がデビューし、その後、それを追うように、続々と世界中から旅客機が誕生しました。イギリスとフランスが共同開発した「コンコルド」や、見た目が“エイ”に似た「ロッキード F-117」、1986年に世界初の無給油無着陸世界一周を行った「バート・ルータンボイジャー」など、多くの名機が改良と進化を重ね、現在の旅客機の仕様に至りました。
安心と快適が詰まった旅客機の構造と性能
通常、旅客機は約20年間で3~6万回の飛行が可能とされていますが、製造時には余裕をもって、6~12万回の飛行に耐える強度が求められています。非常用設備は充実しており、非常口や酸素マスク、ライフジャケットをはじめ、救命いかだや温度・煙感知器も完備。消火システムや防除氷装置、放電装置なども備わっている徹底ぶりです。壁や客室の内部、座席クッションなどは耐火性の材質を用いてつくられており、緊急時に備えた対策と予防がされているのです。さらに快適性では、多くの大型旅客機で、騒音を発するエンジンが客室から遠い翼の後方に取り付けられています。
ちなみに旅客機は、通路が左右2本と座席が横に7~10列並ぶタイプの「長距離航空路」と、通路が中央に1本通っており、座席が横6列以下の「短距離航空路」に分けられます。「長距離航空路」は乗客数300人以上とされており、ヨーロッパを除く国際線として扱う場合が多く、「短距離航空路」では100~200人乗りとされています。
札幌・東京・大阪・福岡・那覇を発着する「短距離航空路」は、多くの人が搭乗するにも関わらず、飛行場の発着枠がいっぱいで便を増やせないため、200~400人乗りの「中距離航空路」が使用されています。
形もメーカーもさまざま。世界の旅客機
世界には数多くの航空機メーカーが存在します。その中で有名なメーカーを挙げると、フランス、ドイツ、イギリス、スペインにまたがる航空機製造メーカー「エアバス」、また、アメリカの「ボーイング」でしょう。その旅客機の特徴も見ていきましょう。たとえば、超大型ジェット機の「エアバスA380」。世界最大とあり機体が大きく、2階建ての豪華仕様になっています。中にはバーやラウンジ、シャワールームが完備され、リッチな気分で乗ることができます。
「ボーイング747-8」は、機体が長い旅客機です。外見は他の機体との違いはないように見えるのですが、実は世界一胴体が長いのです。騒音軽減のため、エンジンカウル(エンジンカバー)にギザギザがあるのも特徴です。
大型旅客機メーカーは「エアバス」と「ボーイング」の2社ですが、ほかにもブラジル最大の輸出企業であり、世界第4位の航空機製造会社でもある「エンブラエル」や、カナダの「ボンバルディア・エアロスペース」、ロシアの「ツポレフ」も有名です。
ついに日本製の旅客機が羽ばたく!国産旅客機、初飛行成功
今まで旅客機を製造する世界のメーカーをご紹介してきましたが、日本の旅客機はご覧になったことがありますか?自動車や電気製品を見ればわかるとおり、世界から高い評価を受けるほどの技術があるにも関わらず、実は日本の国産旅客機は今までつくられてこなかったのです。太平洋戦争後、航空機の研究や製造を全面禁止する「航空禁止令」によって、日本の旅客機製造に長い空白期間が生じたことが原因でした。
しかし、2008年に三菱航空機を筆頭に、国産旅客機「MRJ」の開発・製造がスタート。2015年には初飛行を成功させました。「MRJ」は座席数92席で、ジェット機としてはかなりの小型です。「エアバス」や「ボーイング」の大型ジェット機と比べるとその大きさは見るからに違います。機体が小さい分、飛行距離が短くなりますが、札幌から那覇まで約2000km飛ぶことができます。
納入が延期になるなど、課題も多いとされていますが、ぜひとも成功させたいですね。
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