
宿泊費の実費精算トラブル|出張費の不正を防ぐ方法をご紹介
昨今は、物価の上昇や宿泊施設の人手不足、訪日外国人の増加といった影響により、宿泊費が高騰し、出張規定額を超えてしまうケースが増えています。こうした背景を受け、2025年4月には国家公務員の宿泊費支給方式が、旅費法の改正により、定額支給から上限付きの実費精算へと変更されました。
財務省の令和5年度(2023年度)調査報告書『民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート報告書』によると、国内企業の宿泊費支給方法では「上限付き実費支給」が43.7%で最も多く、次いで「定額支給」が28.9%、「実費支給」が24.0%となっています。海外宿泊料に関しては「実費支給」が53.4%と過半数を占め、「上限付き実費支給」が26.0%、「定額支給」が12.7%となっており、実費精算を取り入れる企業が多いことがわかります。
このような動きから、今後は一般企業においても宿泊費を実費で精算する流れが一層強まると予想されます。
そこで本記事では、宿泊費の実費精算における不正が起きやすい理由と、代表的な不正パターンを解説します。また、不正リスクを防ぐために企業が取るべき対策についてもご紹介します。
出典:財務省『民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート報告書』
目次[非表示]
宿泊費の実費精算で不正が起きやすい理由と発生しやすい不正パターン
宿泊費の実費精算は、領収書を基に精算する仕組みのため、不正が起きやすい傾向があります。
ここでは、その理由とよくある不正のパターンをご紹介します。
宿泊費の実費精算で不正が起きやすい理由
宿泊費の実費精算は、出張者が自分で支払った宿泊費を申告し、その内容に基づいて会社が費用を精算する仕組みです。
通常は領収書の提出が求められますが、その金額が妥当かどうか、実際に宿泊があったかどうかまでを会社側が細かく確認するのは難しいのが実情です。つまり、実費精算は出張者の申告に依存しており、申請内容の正確性は申告者のモラルや判断に大きく左右されます。
こうした構造上の弱点が、不正やミスを見逃しやすい要因となっています。
発生しやすい不正のパターン
宿泊費の実費精算では、さまざまな不正が発生する可能性があります。
発生しやすい不正は、主に「架空の出張申請」「宿泊費の水増し申請」「宿泊先の変更」「QUOカードや現金キャッシュバック付き宿泊プランの利用」の4つです。
架空の出張申請
架空の出張申請は、実際には出張していないにもかかわらず、出張したと偽って宿泊費や交通費などを不正に申請する方法です。
例えば、休日に私的な旅行を行い、その費用を出張扱いで申請するケースが該当します。領収書があれば一見正当な申請に見えるため、実態を確認しづらく、不正を見逃してしまう恐れがあります。
宿泊費の水増し申請
宿泊費の水増し申請は、実際に支払った金額より高い金額を申請して差額を不正に受け取る方法です。
例えば、実際には8,000円のビジネスホテルに宿泊したにもかかわらず、1万円の領収書を提出して申請するケースが該当します。領収書の改ざんや流用といった方法で申請されることもあり、書類上は正当な支出に見えるため、表面的なチェックでは不正を見抜けないことがあります。
宿泊先の変更
宿泊先の変更による不正は、会社に申請して予約したホテルをキャンセルし、より安価なホテルに変更することで差額を受け取る方法です。例えば、申請時に1泊1万5,000円のホテルを予約し、実際には7,000円のビジネスホテルに宿泊することで、差額を着服するケースが該当します。
このような不正は、予約履歴やキャンセル情報を確認しないと気づけないことがあります。
QUOカードや現金キャッシュバック付き宿泊プランの利用
QUOカードや現金キャッシュバック付き宿泊プランの利用も、不正と見なされるケースがあります。例えば、1泊1万円の宿泊プランに3,000円分のQUOカードが付いている場合、会社は1万円を精算しますが、出張者は実質的にQUOカードを個人の利益として受け取ることになります。
同様に、宿泊料金の一部が現金でキャッシュバックされるプランもあります。
この場合も、会社から支払われた宿泊費の一部が現金という形で個人に渡るため、会社負担が私的に流用されている状態になります。
これらのプラン内容が領収書に記載されないこともあり、経理側では気づけないことがあります。
不正リスクを防ぐために企業が取るべき基本対策
宿泊費の不正リスクを防ぐには、企業側の適切な対策が欠かせません。明確なルール作りやチェック体制を強化することで、不正の発生を抑制し、健全な経費管理を実現できます。
ここでは、基本的な対策をご紹介します。
宿泊費に関する明確な社内ルールの整備
宿泊費に関する不正リスクを防ぐためには、明確な社内ルールの整備が不可欠です。具体的には、宿泊費の上限金額や利用できる宿泊施設の範囲、申請・精算の手順を詳細に定めることなどが挙げられます。
また、事前申請の際には出張目的や宿泊先、費用の見積もりを記載させるほか、申請内容の承認フローを設けるなど、透明性を高める仕組みが求められます。
こうしたルールを全社員に周知し、違反時のペナルティや監査体制も明示することで、不正を未然に防止する効果が期待できます。
チェック体制の強化
経費精算における不正リスクを防ぐためには、チェック体制の強化が不可欠です。
その対策として有効なのが、経費精算システムやワークフローシステムの活用です。経費精算システムやワークフローシステムを活用することで、領収書データと申請内容の突き合わせがスムーズに行えるようになり、承認者や経理担当者のチェック負担を軽減しつつ、不正やミスの防止にもつながります。
また、多くの経費精算システムでは、チェック漏れを防止するための機能が備わっています。例えば、精算額が事前申請の使用予定額を超過する場合に超過理由の入力を必須にしたり、特定の費用の精算にアラートを表示したりすることが可能です。
こうしたシステム機能を積極的に活用することで、不正やミスの早期発見が可能となります。
宿泊費の不正対策には出張管理システムが有効
明確なルール整備やチェック体制の強化により不正リスクを軽減することは可能ですが、出張件数の多い企業様においては、より確実に宿泊費の不正を防止するため、出張管理システムの導入がおすすめです。
ここでは、出張管理システム『ビズバンスJTB出張予約』導入によって実現できる具体的な効果をご紹介します。
出張旅費の個人立替を削減できる
ビズバンスJTB出張予約を利用すると、法人一括請求で国内外のホテル予約が可能となり、宿泊費の個人立替を減らすことができます。これにより、実費支給のプロセス自体をなくすことができるため、不正防止に加え、出張者の立替の負担や経理担当者の振込処理の手間を削減することが可能です。
さらに、ホテルだけでなく、鉄道や航空券、パッケージの予約にも対応しているため、宿泊費以外の出張旅費に関する不正も未然に防止できます。
QUOカードや現金キャッシュバック付きプランの予約制御
ビズバンスJTB出張予約では、QUOカードや現金キャッシュバック付きの宿泊プランを表示しないよう制御することが可能です。
予約時点で不適切なプランを除外する仕組みがあるため、経費精算時のトラブルや不正疑惑の発生を未然に防ぎ、安心して出張手配を行うことができます。
まとめ
この記事では、宿泊費の実費精算における不正のリスクと、それを防ぐための対策について以下の内容を解説しました。
- 宿泊費の実費精算は申告者の自己申告に依存する仕組みのため、不正が起きやすい
- 発生しやすい不正は、主に「架空の出張申請」「宿泊費の水増し」「宿泊先の変更」「QUOカードや現金キャッシュバック付きプランの利用」の4つ
- 不正リスクの軽減には、ルール整備やチェック体制の強化が有効
- より確実に宿泊費の不正を防止するなら出張管理システムが効果的
宿泊費の経費精算における不正は、構造的な弱点に起因するケースが多く、企業として明確なルールの策定と実効性のあるチェック体制の構築が求められます。なかでも、不正リスクの高い個人立替やキャッシュバック付きプランの利用を防止するには、出張予約の段階で適切な制御をかける仕組みが有効です。
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