
商用ビザと就労ビザの違いとは?取得が必要なケースとリスクも解説
海外でのビジネス活動や人材派遣が一般化するなかで、「商用ビザ」と「就労ビザ」の違いを正しく理解することは、企業にとって非常に重要です。目的に合わないビザで渡航すると、入国拒否や罰則、さらには企業の信用低下といった深刻なリスクにつながる可能性があります。
しかし、「どの活動にどのビザが必要なのか」「取得費用はどのように会計処理すべきか」といった点は、実務上分かりづらい部分も多いでしょう。
この記事では、商用ビザと就労ビザの基本的な違い、ビザが必要となるケース、誤った選択によるリスク、そして取得費用の会計処理の考え方について解説します。
目次[非表示]
商用ビザと就労ビザの基本的な違い
商用ビザと就労ビザは、どちらも海外で活動する、もしくは働く際に必要となる重要なものですが、その目的や滞在の範囲には明確な違いがあります。
ここでは、それぞれのビザの特徴をご紹介します。
商用ビザとは
商用ビザは、海外での短期的なビジネス活動を目的として発行されるビザです。具体的には、商談や会議、展示会への参加、契約交渉などが代表的な活動にあたります。
なお、このビザでは現地で報酬を受け取る形での労働は原則として認められておらず、あくまで現地での報酬を伴わない自国企業の業務に限定されます。そのため、長期的な就労や現地での雇用を伴う業務には利用できません。
就労ビザとは
就労ビザは、現地企業に雇用され、給与を得ながら働くことを目的として発行されるビザです。長期滞在を前提としており、滞在期間中は現地での就労活動が認められます。
ただし、就労ビザには種類があり、ビザを持っていればどの仕事でも自由にできるわけではありません。ビザの種類ごとに認められる業務内容や職種が限定されているため、就労予定に合ったビザを取得する必要があります。
商用ビザ・就労ビザが必要となるケース
商用ビザや就労ビザは、海外での活動内容によって必要となるケースが異なります。具体的な要件や滞在期間は国や状況によって変わるため、事前に確認することが重要です。
ここでは、それぞれのビザが必要となる典型的なケースについて解説します。
商用ビザが必要となるケース
商用ビザが必要となる主なケースは以下のとおりです。
短期の出張・商談・契約交渉
商用ビザは、海外で短期間のビジネス活動を行う場合に必要となります。具体的には、数日から数週間程度の出張での商談や会議、展示会への参加、契約交渉などが該当します。現地で報酬を受け取る労働は認められず、自国の企業や団体に所属したまま業務を行うことが前提です。
展示会やイベント参加
商用ビザは、海外で開催される展示会や業界イベントへの参加など、短期間のビジネス活動にも必要です。自社製品やサービスの展示・紹介、最新の業界動向の調査、マーケットリサーチ、参加者との情報交換やネットワーキングなど、多様な活動が含まれます。
現地パートナーとの打ち合わせ
商用ビザは、海外の現地パートナーとの打ち合わせに参加する場合にも必要です。契約内容の確認や調整、共同プロジェクトの進捗確認、新しいビジネス機会の検討、業務フローや販売戦略の共有など、幅広いビジネス活動が含まれます。
就労ビザが必要となるケース
就労ビザが必要となる主なケースは以下のとおりです。
駐在員として派遣される場合
就労ビザは、海外の現地法人や支社に駐在員として派遣される場合に必要です。現地で給与を受け取りながら、業務管理や現地スタッフの指導、事業運営のサポート、現地市場の調査や戦略立案など幅広い業務を行います。
長期滞在を前提とした活動であり、派遣期間中は現地での正式な就労が認められます。
インターンや長期研修など報酬が発生する活動
就労ビザは、海外でのインターンシップや長期研修など、報酬を受けながら行う活動にも必要です。現地企業や団体での実務経験を通じて業務スキルを習得したり、プロジェクトに参加したりする場合が該当します。
これらは短期の出張や研修ではなく、長期滞在を前提とした報酬を伴う就労活動として扱われます。
ビザ選択を誤った場合のリスク
海外渡航の際に適切なビザを選択しないと、個人や企業に大きな影響を及ぼすリスクがあります。
ここでは、代表的なリスクをご紹介します。
入国拒否や強制送還
適切なビザを所持していない場合、入国審査で入国を拒否されるリスクがあります。場合によっては、入国直後に強制送還され、渡航目的を達成できないだけでなく、今後の渡航に影響を与える記録が残る可能性もあります。ビザ条件を事前に確認し、正しい種類を取得することが重要です。
罰金や再入国制限
ビザの条件に違反した場合、罰金が科せられるケースがあります。また、一定期間再入国が制限されることもあり、今後の海外活動やビジネス展開に支障をきたします。特に、報酬を伴う就労活動や長期滞在の条件違反は重い制裁の対象となるため注意が必要です。
企業側の信用低下
企業が従業員に不適切なビザで渡航させた場合、現地当局からの信頼を損なうおそれがあります。その結果、現地での事業運営や契約交渉が滞り、今後の人材派遣や取引拡大にも支障をきたすことになりかねません。
商用ビザ・就労ビザ費用の会計処理
ビザの取得にかかる費用は、その目的や支払い先によって勘定科目が異なります。
業務出張や赴任に伴うビザの申請費用は「旅費交通費」、入管や領事館へ支払う公式手数料は「租税公課」、行政書士や代行業者への依頼費用は「支払手数料(または支払報酬)」として処理するのが一般的です。
また、日本国内で支払う交通費や宿泊費などは消費税の課税対象ですが、入管・領事館の公式手数料や税金などは非課税扱いとなります。行政書士や代行業者への報酬は、国内取引であれば消費税の課税対象です。
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まとめ
この記事では、商用ビザと就労ビザの違いや必要となるケース、誤ったビザ選択によるリスク、関連する会計処理について以下の内容を解説しました。
- 商用ビザは短期的な商談や会議、展示会参加など、報酬を伴わないビジネス活動を目的としたビザ
- 就労ビザは現地で給与を得ながら働くことを目的としたビザで、職種や業務内容に応じた種類がある
- 不適切なビザで渡航すると、入国拒否や罰金、企業の信用低下などのリスクが生じる
- ビザ取得費用は支払い先や目的に応じて「旅費交通費」「租税公課」「支払手数料」などで処理するのが一般的
海外での業務や出張では、活動内容に適したビザの取得が不可欠です。正しい種類のビザを選択することでトラブルを未然に防ぎ、円滑な事業運営を実現できます。
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